← ishizakahiroshi.com
エッセイ 2026-06-20

「実質1円」をやめて、定価でiPhoneを買った話

バッテリー最大容量75%の赤い警告表示と、Apple公式で買い替えるまでの遠回りを描いたヒーロー画像

設定画面に、赤い文字で「バッテリーは著しく劣化しています」。最大容量は75%。5年使った iPhone 12 の買い替えで、「実質1円」「実質24円」に振り回されて2週間遠回りした末、結局 Apple 公式で定価購入+下取りという一番地味な選択に落ち着きました。

note で読む →

きっかけは、赤い文字の「著しく劣化しています」

スクロールが一瞬詰まる。カメラの起動がワンテンポ遅い。気のせいかな、で済ませていたある日、設定を開いたら赤い文字が出ていました。バッテリー最大容量 75%、「著しく劣化しています」。5 年使った iPhone 12 です。

バッテリーが弱ると、iPhone は突然電源が落ちないように、わざと性能を抑えにいきます。だから「重い」。劣化と「もっさり」は別々の症状ではなくて、ひとつながりの話だったわけです。

そして 75% まで来ると、寒い朝にでも急に電源が落ちておかしくない。ある日データごと、ふっといなくなる可能性が上がっていく。そろそろ替えどきだな、と。ここまでは早かったんです。問題はこの後でした。

「実質1円」「実質24円」の安さに、一度は本気で乗りかけた

買い替えを調べ始めると、まず飛び込んでくるのが「1円」とか「実質24円」という値段です。某キャリアの iPhone 17e が 1 円。別のところでは実質 24 円で、2 年後に返す前提。

数字だけ見ると、定価で 6 万円台を払うのがバカみたいに思えてきます。一度はかなり本気で、1 円のほうを申し込みかけました。でも、申し込みボタンの手前で、なんとなく手が止まったんです。

1円の裏に、条件と期限がぶら下がっている

止まった理由を、ひとつずつほどいていきました。

「実質1円」の「実質」は、こっちが条件と期限を全部背負うことで成り立っている。表示価格が安いほど、ぶら下がっている荷物が重い。

iPhone 18 を待つ、という手もあったけれど

もうひとつ迷ったのが、新型を待つ案でした。秋には次の iPhone が出る。そうなれば型落ちが少し値下がりするかもしれない。3 か月待てば、と。

ただ、今の iPhone 12 は 75% で、いつ落ちてもおかしくない。3 か月のあいだ、突然死のリスクを抱えて過ごすのと、今ここで確定させるのと、どっちが落ち着くか。待って数千円浮くかもしれない金額より、ある日データごと消える可能性のほうが、自分には重く見えました。

結局、Apple 公式で買って、古いのは下取りに出す

ぐるっと回って、たどり着いたのはこれです。

端末を回線の抱き合わせから切り離してあるから、キャンペーンの対象条件も申込期限もまるごと関係なくなります。やることは「新品を受け取る」「データを移す」「古いのを下取りに送る」の 3 つだけ。分岐がない。

下取りの段取りもシンプルでした。注文した端末が届いたら、Apple から下取り手順のメールが来る。本人確認をして、14 日以内に集荷を予約する。古い iPhone は、新しいほうへの移行が終わってから、サインアウトして「探す」をオフにして初期化する。

そもそもこの iPhone 12 も、発売から 2 か月くらい経ったころに約 8.8 万円で買ったものでした。それを 5 年使って、最後に 2 万円ほどで下取りに出す。差し引き 6.8 万円を 5 年。月にならすと、ひと月あたり千円ちょっとです。派手な割引には乗らなかったけれど、定価で買って長く使い切れば、コスパはちゃんと出る。

端末は Apple、SIM は日本通信。回線はキャリアに任せない

もうひとつ、地味だけど効いているのが回線の持ち方です。端末は Apple 公式で定価。回線はキャリアの抱き合わせには乗らず、日本通信の合理的 20GB プランで別に持っています。20GB で月 2,000 円ちょっと。在宅中心の自分には、これでじゅうぶん足ります。

「1 円」は魅力的に見えるけれど、申し込みの前に「この条件は対象か、対象外か」を延々と確かめる時間が要る。もし対象外なら、全部やり直し。あのやきもきが、地味にこたえるんです。その点、Apple 公式で定価をすんなり払うのは、拍子抜けするくらい簡単でした。条件もない、期限もない、ただ買うだけ。

しかも、トータルでは安く付きます。「実質1円」はたいてい高い回線とセット。端末を定価で買って、回線は格安 SIM で長く回すほうが、毎月の差がじわじわ効いて、結局こっちが安い。端末と回線を、無理にひとまとめにしない。分けて持つと、お金も気持ちも、どっちも軽くなります。

買い替える前に、2 段階認証だけは固めておく

これは少し脇道ですが、けっこう大事な話です。機種変で一番こわいのは、2 段階認証の引き継ぎ。古い端末が突然死すると、認証アプリごと道連れになる。新しいほうにログインしたいのに、その認証コードが古いほうの中にいる、という詰みかたをします。

なので買い替えを決めた日に、先にここだけ固めました。

新しい端末が届いてからやろうとすると、たいてい間に合いません。突然死は、こっちの予定を待ってくれないので。

安さの計算に、「手間」と「失敗」も入れる

今回いちばん腑に落ちたのは、これでした。表示価格は、コストの一部でしかない。条件を確認する手間、期限に追われる緊張、対象外だったときの徒労、2 年後に何も残らないこと。そういう見えない荷物まで足し算すると、「定価で買って下取りに出す」という一番地味な選択が、結局いちばん軽かった。

派手な「1 円」に一周振り回されて、元の場所に戻ってきただけ、とも言えます。でも、その一周があったから、地味なほうを納得して選べた気もしています。次にスマホを替えるときは、たぶん最初から Apple 公式を開きます。たぶん。