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設計判断
2026-08-13
対応 AI CLI を増やす前に、自分のツールの利用者数を測った方がいい
AI コーディング CLI を 20 製品調べました。Kimi、DeepSeek、Devin、Droid、CodeBuddy、Qwen Code、iFlow、Mistral Vibe、Sakana Fugu。中国系も含めて、月額サブスクの有無と無料枠まで洗いました。結果、1 つも実装しないことにしました。判断が変わったのは、候補の利用者数を並べ終えた後に、自分のツールの数字を測っていないと気づいたときです。
Qiita 記事は要約版です。このページには、記事に載せきらなかった調査結果を全部載せています。
この記事のテーマ
自作の many-ai-cli は、複数の AI コーディング CLI を並列で走らせて承認をブラウザ 1 タブに集約するダッシュボードです。現在 Claude Code、Codex CLI、GitHub Copilot CLI、Cursor Agent、opencode、Grok の 6 つに対応しています。7 つ目に何を足すかを調べました。
調査の結論は「どれも足さない」です。ただし理由は「良い候補が無かった」ではありません。候補の利用者数を根拠に採否を決めるという枠組み自体が、この規模のツールでは最初から機能しないと分かったからです。以下、20 製品の実測データと判定を全部公開します。
1. どう絞ったか
「有名な AI エージェント」ではなく「wrap して意味があるか」で絞りました。5 つの関門で 20 製品が 3 つに減ります。
図 1: 左が判定条件、右が各段で落ちたもの。API しか出していない製品と、定額プランを持たない BYOK 系。この 2 つで半分以上が落ちた。
図 2: 各関門で何が落ちたかの内訳。
2. 利用者はどのくらいいるのか
公表ユーザー数を出しているベンダーはほぼ無いため、npm レジストリの週次ダウンロード数と GitHub のスター数を API から直接取得しました。以下はすべて 2026-08-13 の実測値です。
# npm 週次ダウンロード
Invoke-RestMethod -Uri "https://api.npmjs.org/downloads/point/last-week/@moonshot-ai/kimi-code"
# GitHub スター数
Invoke-RestMethod -Uri "https://api.github.com/repos/MoonshotAI/kimi-code" `
-Headers @{ 'User-Agent'='ps'; 'Accept'='application/vnd.github+json' }
図 3: 対数スケールにしてもなお、自作ツールの棒はほとんど伸びない。
npm 週次ダウンロード数(対数スケール)
Claude Code 対応済
15,100,156
対応済み
今回の候補
自作ツール
並べ終わったところで手が止まった。表は埋まっているのに、何と比べているのかが自分でも言えない状態だった。
この数字を「利用者数」と読み替えるときの注意。
npm のダウンロードは CI・Docker ビルド・複数マシン・自動更新のたびに重複して計上されます。CLI 系は自動更新が頻繁なので、実ユーザー数はこの 5 分の 1 から 20 分の 1 程度と見るのが妥当な範囲です。加えて npm 経由でない導入は 1 件も入りません。Kimi Code は公式インストールスクリプトが推奨経路、Droid と Devin は curl 経由が主なので、この 3 つは実態より小さく出ています。とくに Droid の 1,463 は「利用者が少ない」ではなく「npm がほぼ使われていない」と読むべき数字です。
GitHub スター数(実測)
| リポジトリ | スター | フォーク | 最終更新 |
| sst/opencode | 196,571 | 25,264 | 2026-08-12 |
| anthropics/claude-code | 141,224 | 22,687 | 2026-08-12 |
| google-gemini/gemini-cli | 106,491 | 14,428 | 2026-08-12 |
| openai/codex | 105,554 | 16,007 | 2026-08-12 |
| cline/cline | 66,076 | 7,095 | 2026-08-12 |
| block/goose | 52,729 | 5,994 | 2026-08-12 |
| Aider-AI/aider | 48,151 | 4,833 | 2026-05-22 |
| charmbracelet/crush | 27,307 | 2,150 | 2026-08-12 |
| QwenLM/qwen-code | 26,948 | 2,846 | 2026-08-12 |
| bytedance/trae-agent | 12,019 | 1,334 | 2026-02-05 |
| MoonshotAI/kimi-code | 6,456 | 1,024 | 2026-08-12 |
| iflow-ai/iflow-cli | 5,110 | 417 | 2026-03-20 |
| ishizakahiroshi/many-ai-cli | 6 | 2 | 2026-08-13 |
伸びを見ると Kimi は加速中です。Kimi Code の月次ダウンロードは 100,817 で、週次 34,997 の 4 週分(約 14 万)を下回ります。直近の週が過去平均より速いということです。逆に iFlow CLI は最終更新が 2026-03-20 のままで約 5 か月止まっており、Trae Agent は 2026-02-05 で止まっています。
3. 導入おすすめ度(5 段階)
図 4: 横軸が利用規模、縦軸がおすすめ度。右上が理想だが、そこには既に対応済みのものが居る。
Kimi Code CLI
★★★★★
第一候補
Moonshot AI / 中国
月額$19 / $39 / $99 / $199
年額換算$15 / $31 / $79 / $159
週次DL34,997
スター6,456
ライセンスMIT(CLI 本体)
メリット
- 5 条件をすべて満たす唯一の候補。他はどこかで欠ける
- 第三者ツールからの利用が公式に許諾されている。CLI・VS Code・対応サードパーティが同じ会員枠を共有すると明記
- Windows を公式サポート(PowerShell スクリプト)
- リポジトリに AGENTS.md と CLAUDE.md が実在。承認マーカー注入は既存機構が流用できる見込み
- 危険なツール呼び出しを止める lifecycle hooks があり、承認 UI の存在が確認できる
- 直近の伸びが加速している
デメリット
- データ送信先が中国。public リポでのみ起動する運用ガードが前提
- Windows ではバンドルされた Git Bash をシェルとして使う設計。既存の Windows / WSL 分岐と噛み合うかは実機検証が必要
- 絶対的な利用規模は既存 4 provider の 100 分の 1 以下
- 前身の kimi-cli(Python 版)から kimi-code(TypeScript 版)へ移行中で、旧版は縮小予定
Droid(Factory AI)
★★★★★
米国
月額$20 / $100 / $200
無料枠なし
週次DL1,463(npm 非代表)
パッケージ@factory/cli(別名 droid)
メリット
- 米国製でデータ送信の懸念が中国系より小さい
- ターミナル TUI としての完成度が高く、Claude Code と直接比較される位置
- 5 時間・週・月の 3 段ローリング制限が明示されている
デメリット
- 無料プランが無い。検証だけでも $20 かかる
- npm 週次 1,463 と低く、実規模を測る手段が無い
- 公式 pricing に CLI がどのプランで使えるかの明記が無い
- 指示ファイルの仕様と Windows ネイティブ対応が未確認
Devin CLI(Cognition)
★★★★★
米国
月額Free / $20 / $200
無料枠あり
npm非配布(curl install)
モデルOpus 4.7 / GPT-5.5 / SWE-1.6
メリット
- 無料プランがある。今回の条件に応える唯一の米国製候補
- Rust 製の自前ターミナル描画で TUI の応答性を売りにしている
- フロンティアモデルを選べる
- ローカル実行からクラウドへの引き継ぎという他に無い動線を持つ
デメリット
- 導入が curl 前提で、Windows ネイティブ対応が未確認
- 指示ファイルの仕様が未確認で、承認マーカー注入の可否が読めない
- npm に無いため利用規模をまったく測れない
- 無料枠のクォータが公開されていない
CodeBuddy Code(Tencent)
★★★★★
規模は候補中で最大
中国
週次DL111,073
月次DL468,294
国際版月額不明
メリット
- 候補群では最大の利用規模。Kimi Code の約 3.2 倍
- 2026-01 の v2.0 で Skills・Plan Mode・ACP 対応・隔離サンドボックスを実装済み
- npm で普通に配布されており導入経路が読みやすい
デメリット
- 国際版の個人向け月額が確認できない。取れた価格は中国国内の企業版のみ
- ダウンロードの多くが中国国内である可能性が高い
- データ送信先が中国
- Anthropic の規約強化を受けて Claude モデルを外した経緯があり、モデル構成が流動的
iFlow CLI / Mistral Vibe / Qwen Code
★★★★★
条件は満たすが決め手を欠く群
メリット
- iFlow CLI: 完全無料で Kimi・GLM・Qwen3・DeepSeek を叩ける。API キーすら不要
- Mistral Vibe: 欧州企業で規約・データ面が整理しやすい。Le Chat Pro $14.99 に含まれ、学生は 5.99 ユーロ
- Qwen Code: 週次 74,279 と規模がある。CLI 自体は無料の OSS
デメリット
- iFlow CLI: 週次 812 と極小。最終更新が 2026-03-20 で約 5 か月停滞。無料の代償としてデータ送信ポリシーの精査が重い
- Mistral Vibe: npm に無く規模を測れない。Windows 対応と指示ファイル仕様が未確認。サブスクは API クレジットを含まない別請求
- Qwen Code: 無料 OAuth 枠が 2026-04-15 に終了済み。ModelStudio の Coding Plan か BYOK が必要
Amp / Auggie / Amazon Q CLI / DeepSeek
★★★★★
対象外
評価できる点
- Auggie: 週次 38,802 と Kimi を上回る規模がある
- Amp: 週次 20,160。最低 $5 のクレジットで始められる
- Amazon Q CLI: 無料枠で月 50 リクエスト、Pro $19
外す理由
- Amp: 月額サブスクが無く従量クレジットのみ。広告支援の無料枠は受付停止中
- Auggie: クレジット制で定額とは言えない
- Amazon Q CLI: 2027-04-30 でサポート終了。実装しても寿命が 1 年半
- DeepSeek: 公式のターミナル CLI が存在しない。Deep Code も Reasonix も第三者製で、DeepSeek 側はコミュニティ統合として案内しているだけ。課金も API 従量のみ
4. provider 追加ではなく「既存 provider に差す」もの
GLM と Sakana Fugu は、他の候補と分類そのものが違います。wrap する CLI ではなく、既存 provider の裏に置くバックエンドです。
図 5: 上が provider 追加(実装が必要)、下が既存 provider への差し込み(コード変更ほぼ不要)。
GLM Coding Plan(Zhipu / z.ai)
Anthropic 互換の /api/anthropic エンドポイントを持ち、Claude Code に無改造で差さります。公式サポート対象は Claude Code、Cline、OpenCode。Codex は挙がっていません。
価格は Lite $18/月(5 時間あたり 2,000 クレジット、週 10,000 クレジット)。Pro と Max は公式ドキュメントに金額が載っておらず、クレジット枠だけが記載されています。無料枠はありません。ただし Coding Plan とは別に、API 側に GLM-4.5-Flash という完全無料のモデルがあります(世代は古い)。
Sakana Fugu(Sakana AI・日本)
2026-06-22 に一般提供が始まった、OpenAI 互換 API のマルチエージェント基盤モデルです。Fugu 自身が LLM で、他の LLM プールへ選択・委譲・検証・統合を行います。SWE-Bench Pro で Fugu Ultra が 73.7、TerminalBench 2.1 で 82.1。
Standard $20 / Pro $100 / Max $200。無料枠やトライアルクレジットの記載はありません。サブスクには API アクセスが含まれ、月次の利用枠がバンドルされます。別途 pay-as-you-go もあります。
Codex CLI から使うには ~/.codex/config.toml に model_providers を書きますが、実機報告によると Codex が送る image_generation ツール型を Sakana 側が受け付けず(function と custom のみ許容)、Node.js のプロキシで除去する回避が必要でした。両者とも「OpenAI 互換」を名乗りながらスキーマが噛み合っていない状態です。
なお、国産だからデータが日本に閉じるという期待は成立しません。Fugu は内部で他社のフロンティアモデルへ委譲する設計なので、コードは結局そちらへ渡ります。
5. 実装コストの目安
直近で provider を 1 本追加した opencode のコミットを実測しました。18 ファイル・180 行追加です。
| 領域 | 内容 |
| 設定 | provider 定数・承認パターン URL・スラッシュコマンド URL の追加(+24 行) |
| 承認検出 | TUI の承認プロンプト検出ロジック(+25 行)。ここが最も実機依存 |
| 起動 | PTY 起動と provider 固有の設定ファイル生成(opencode は専用ファイル 55 行) |
| 配信リソース | 承認パターンとスラッシュコマンドの定義を新規 2 本 |
| Web UI | 承認ボタンと spawn パネルの選択肢、日英の文言 |
作業の重心はコード量ではなく承認プロンプトの実機採取です。TUI が実際にどんな文字列でどんなキー入力を待つのかを取らないと、承認検出パターンが書けません。
そして本当のコストは追加時ではなく、その後の追従にあります。provider を 1 本足すと、承認パターンの定義とモデル一覧の追従対象が 1 本ずつ増えます。この 2 つには鮮度チェックの仕組みが無く、陳腐化しても気づきません。
6. 結論と、数値の確度
今回はどれも実装しないことにしました。第一候補の Kimi Code CLI は条件を満たしていますが、順序を逆にすべきだと判断したためです。実装してから使うか決めるのではなく、素で使ってみて日常の運用に入るなら実装する。この順序なら無駄になるのは課金分と数時間だけで、腐るコードは 1 行も生まれません。
先に道具を出して触ってみる。設計図を広げるのはその後でいい、という順序。
実測(API から取得・2026-08-13): npm 週次・月次ダウンロード数、GitHub のスター数・フォーク数・最終更新日、opencode 追加コミットのファイル数と行数。コマンド出力そのままです。
推定(実測から計算・断定していない): 実ユーザー数への換算。週次ダウンロードを 5〜20 で割ったレンジで、換算係数に厳密な根拠はありません。桁の目安として読んでください。
未確認(確かめていない): Devin・Droid・Mistral Vibe の Windows ネイティブ対応と指示ファイル仕様。CodeBuddy の国際版個人向け月額。GLM の Pro / Max の金額。
出典
many-ai-cli について
複数の AI コーディング CLI を並列で走らせ、承認をブラウザ 1 タブに集約するローカル Web ダッシュボードです。スマホからでも承認できます。