NISAでオルカンを積み立てていると、信託報酬の年0.05775%という数字を、いつのまにか「そういうもの」として見るようになります。これ、世界的に見ても安いんでしょうか。運用会社・取引所・金融当局・業界団体・国連の一次資料だけを使って、全世界株1本で持てる低コスト商品を10本並べました。結果は上位4本が日本の非上場投信で、Vanguard の VT(0.06%)と真正面から並んでいました。
記事全体の要約。日本の投信コストの水準、規模が大きくなるほど安くなる雪だるまの構造、地域ごとに異なる投資の器、の3つが柱です。
きっかけは「オルカンって、世界的に見ても安いんですか」という素朴な疑問でした。調べ始めてすぐ、比較が壊れかけます。コストの呼び名が国ごとに違い(日本は信託報酬、米国は Expense Ratio、欧州は TER や OCF)、計算に含まれる範囲も制度ごとに一致していないからです。さらにファンドの中からETFへ投資する二重構造の商品があり、外側の数字だけ見て並べると順位が狂います。
条件を絞って一次資料で確認できた10本を安い順に並べると、楽天0.0561%、eMAXIS Slim 0.05775%以内、はじめてのNISA 0.05775%、Tracers 0.05775%、そして米国VTが0.06%。上位が日本の非上場投信で埋まりました。「日本の投資信託は手数料が高い」というイメージは、ネット証券とNISA向けの低コストインデックス投信という狭い範囲に限れば、もう実態と合っていないようです。
一次ソースで確認できた10本。日本の信託報酬と米国の Expense Ratio と欧州の TER は計算範囲が完全一致しないため、小数点第3位以下の差は優劣として扱っていません。データ日もそろっていません。
記事の前半では、初心者がいちばん引っかかる「上場」と「ETF」を先に整理しています。上場というのは、証券取引所という市場に商品を並べてもらうこと。つまり置いてある場所の話でした。並んでいれば株と同じ操作で買えて値段は取引時間中ずっと動き、並んでいなければ運用会社が作ったものを証券会社や銀行が売り、値段は1日1回だけ決まる。そしてETFは別の商品ではなく、投資信託のうち取引所に並んでいるものでした。
「取引所に並んでいるか」と「指数に連動させるか」は別の軸。オルカンは左上、VTは左下で、どちらも同じインデックス運用です。
楽天0.0561%とオルカンの公表上限0.05775%の差は0.00165ポイント。1,000万円持っていても単純計算で年165円しか変わりません。この程度では乗り換えが起きない一方、オルカンには純資産額に応じて一部の料率が下がる段階制が入っています。2026年7月末の純資産は13兆157.2億円。大きくなるほど一部のコストが下がり、下がるからまた資金が集まる。雪だるまという言い方が、比喩ではなく料率の設計そのものでした。
左が単純計算の年間コスト、右が段階料率による雪だるまのループ。0.00165ポイントの差より、右の輪のほうが効いています。
この現象は日本だけではありませんでした。米国では2026年6月時点でインデックス型資産が53.7%とアクティブ型を上回っています。違うのは受け皿のほうで、日本は非上場投信の自動積立、米国と欧州はETF、欧州はさらにUCITSという国境を越える共通市場を持ちます。新興国では制度の制約が先に来ます。ブラジルはVTを包み直して合計約0.36%、インドは海外投資に業界全体の上限があり、中国はQDIIなど法定の越境ルートを使う。コスト差の背後にあるのは、やる気ではなく制度と市場規模でした。
同じ「全世界株を1本で持つ」という目的でも、地域ごとに入っている器が違います。
記事では、2026年の国連安全保障理事会15カ国での比較、制裁下のロシアを同じ表に入れられない理由、外国人がオルカンを買えるのか(公開資料から保有比率は推計できない)まで扱っています。結論としてオルカンを「世界最安」とは断定していません。そう言い切るには世界中の全シェアクラスまで集める必要があるからです。