2026年9月12日に「AI の能力を上げる速度を落とそう」と呼びかけた Anthropic と、それに同意した OpenAI が、10日後の9月22日に Claude Opus 5.5 と GPT-6 Sol / Luna を出しました。約束を破ったのかを一次情報で確かめると、OpenAI は最大規模の学習を保留したままで、Opus 5.5 は外部評価を通してから出ていました。それでも競争は止まっておらず、価格、推論の速さ、安全性、AI に任せられる時間へと、競争する場所が移り始めています。9月13日の「逆カルテル」の記事の答え合わせで、AI チキンレースのシリーズ 5 本目です。
記事全体の要約。左が 9月12日までに言われたこと、右がその後の 10 日間に出てきたもの、下がこれから半年追いかける問いです。
アモデイのエッセイ「We Must Pace the Frontier」は、最初から「学習や技術開発を止めることではない」と書いていました。Anthropic は Opus 5.5 が宣言後初のリリースであることと、外部の評価者がリリース前にテストしたことを自分で明記し、OpenAI は 8 月の事故を受けて最大規模のフロンティア RL を保留にしたままです。一方で、9月21日には SpaceXAI がより大きなベースモデルの Grok 4.7 を出し、Google も 6 週間で 3 回の Flash リリースを重ねていました。「口では安全、裏では新モデル」で片付けるのも、「停止ではないので何を出しても矛盾しない」で片付けるのも違う、というのが今回の出発点です。
記事では、Opus 5.5 が Opus 5 より 40% 安く 30% 以上速いこと、OpenAI が Sol と Luna を「コスト効率の前線を進める」モデルと書いていることから、競争が最高能力の 1 本勝負から、価格、推論の速さ、安全性、長時間のエージェント作業へばらけ始めていると読みました。あわせて、Cohere の CEO が本当に「cartel」と書いた反論、宣言から 6 日で起こされた反トラスト訴訟、アメリカ政府と中国勢が握手の外にいること、Z.ai が書いた再帰的自己改善の話を並べています。前回の「Google は先に降りていた」という予想は、見落としていた材料があったとして訂正しました。
いまの見立ては、協調して遅らせればカルテルだと訴えられ、協調しなければ競争は止まらない、というものです。止まろうとしているのはレースではなく、最高速度だけを少し下げて、別の車線で全開にしている。最後に、第三者評価者の常駐、評価による延期、学習停止の期間、100 万トークンあたりの価格、設備投資、中国系モデルとの差など、半年追いかける 8 つの問いを残しています。
宣言のあとの 10 日間だけで、6 社から新しいモデルや計画が出ています。宣言より前に出ていたものは左に分けました。
機械そのものは大きくならないまま、運び出すベルトだけが増えていく。最高の能力を少し止めても、コストの前線を進めれば、実際の影響力は増えます。
最高能力の 1 本勝負から、競争の軸がばらけ始めています。frontier を単数形で語ること自体が、だんだん難しくなってきました。
人が見ていない時間に、どこまで任せられるか。次の競争の軸は「自律時間」になる、というのは筆者の予想です。
前回置いた 5 つの問いの途中経過。記事では、ここから半年追いかける問いを 8 つに増やしています。